中小企業の経営者は目的と手段を明確に分かっていますか
例えば神奈川から東京に向かうとします。車や電車だけでなく自転車やジョギングでもたどり着けるでしょう。しかし目的地が北海道だとしたらどうでしょうか。「ジョギングが好きだから」と言って北海道を目指すでしょうか。1カ月や2カ月かけたらたどり着けるかも知れません。しかしそんな悠長なことをしなくても、2日間働いて飛行機のチケットを買えばいいと思いませんか。そうすれば3日で北海道に行けるのです。
何が言いたいのかというと、大企業は目的を達成するために必要な手段は何かを常に考えているということです。どれだけ速く、効率よく、目指すところに行くか。目指すところに到達するために、歩いていくのか、自転車を使うのか、電車を使うのか、飛行機を使うのか。
目的を達成するために最適な手段をそのつど選択するのが大企業です。
ジョギングで北海道を目指すのが中小企業です。手段にこだわっているということです。目的と手段を履き違えている典型です。
例えば「この健康食品を多くの人に広めたい」と健康食品を売っている人がいるとします。「昔から身体が弱く大変な思いをしてきたが、この食品に出会って救われた。1人でも多くの人に使ってもらいたいからこの商売をしている」という経営者です。
「多くの人に広める」ことが目的なら、それを買い取って無料で配ればいいのです。何か別の仕事をしてお金を稼ぎ、その健康食品を街で無料で配ればいいではありませんか。それを商売としてやりたいという思いの根本はもっと別のものであるはずです。きれいな言葉で飾るだけでは商売として成り立ちません。その根本の思いは、商売をする上でもっときちんと表すべきなのです。
「健康にいいから1人でも多くの人に食べてもらって健康になってもらいたい」という思いは、1人の人間として持つべきだとは思います。しかし、目的は「多くの人に広めたい」であってはならないのです。繰り返しになりますが「それなら無料で配るのが一番いい」ということになってしまうからです。
資本主義社会では、利益がなければ目的を達成できません。目的を達成するための手段を選ぶ必要があるのです。「多くの人に広めたい」(目的)から「無料で配る」(手段)では、長続きしませんし、結局中途半端に終わってしまうに違いありません。中小企業がこんなことをしては早晩倒産に追い込まれてしまいます。中小企業の経営者は目的と手段を分けて考え、経営が成り立つために必要な手段を選択しなければなりません。