中小企業の目標設定と手段選択の方法
水泳が趣味で、時間を作って毎日泳ぐ人がいるとします。毎日タイムを計るでしょう。自分のタイムを縮めようとするでしょう。大会にも出るかも知れません。
一方で「オリンピックで金メダルを取る」と思って水泳をしている人がいるとします。オリンピックで金メダルを取るという大きな目標を持った人も毎日泳いで、タイムを計って、それを縮めようとするでしょう。しかし、目指すのは世界一です。4年間かけて世界一を目指すのです。練習にかける気迫や練習時間、練習メニュー、日々の暮らし方などのあらゆることが、趣味で水泳をしている人とは完全に異なっているはずです。
飲食店を経営するとき、自分たちが生活していけるだけの儲けを出せばいいのであれば、ほかのすべての飲食店をライバルと見なす必要はありません。水泳で自分のタイムを縮めるため、飲食店で自分たちが生活するためであれば、ライバルのことを常に考える必要はないのです。
卒業文集に「プロ野球選手になりたい」と書く小学生は五万といます。野球が好きで大人になっても続けているでしょう。でもそれはおそらく草野球です。
イチローは「世界一になる」と書いています。「自分は毎日練習している。辛いこともあるけれど続けています。これを続けることで日本一の野球選手になるのです」と書いているのです。
どちらも練習しているし、野球が好きだし、試合にも出ています。でもその目標の立て方、そのための手段がまったく違うということが理解できるでしょう。
大企業は金メダルを目指すオリンピック選手、世界一を目指すイチローのような存在です。常に結果に集中していなければ2位以下に負けてしまいます。毎月ほんの少しでも貯金ができればいい、とりあえず食べていければいいと思っている中小企業とは初めから目指すところが違うのです。
資本金が1億円を超えれば大企業、証券取引所に株を一般公開すれば上場企業です。大企業の中にはモラルを疑いたくなる企業や方針に共感できない企業もあります。一方すばらしい経営理念や方針を持っている中小企業も多くあります。
すべての中小企業に大企業を目指せと言っているわけではありません。大切なのは目的設定の仕方であり、そのための手段の決定の仕方です。大企業の考え方やルールの中には自社の価値を高めていくためのエッセンスや倒産しないための策があるのです。それを1つずつ掘り下げていこうと考えています。