美容室経営とランチェスター戦略(1)
美容業界とほかの業界は大きく異なっている、ということにお気づきでしょうか。私はこれまでに多くの美容室経営者と関わってきてこの違いに気づきました。
スーパーを例にしてみましょう。巨大な資本を持つイオングループやセブン&アイホールディングスが地域に参入すると、たちまち地元の商店は軒並みダメージを受けます。同じ商品を仕入れるにしても、1つ単位で仕入れるのと1万個単位で仕入れるのとでは仕入れ値が異なります。
そもそも売り方が違うのは避けられません。広告を大きく打ってブランド力を高めている大企業のスーパーに対して、多くの人は「ここの商品なら悪いものではないだろう」というイメージも持っているものです。街の小さなスーパーのほうが新鮮で質のいい物を安く扱っている可能性もありますが、大資本の大型スーパーのイメージが消費者を集めてしまうのです。
一方美容業界では、ブランド力の高い美容室や全国展開している美容室であっても、その美容室に客が一極集中することはまずありません。ブランド力はほとんど影響ないとさえ言えます。
その理由は、美容室に対するニーズが無限の幅を持っているからです。値段ひとつをとっても1000円でカットをしてほしい人から1万円払って美容室で過ごしたい人までさまざまです。美容業界でも価格競争は起きてはいますが、得られるサービスが同じであれば安いほうがいいという程度であって、安い美容室だけに人が集まるわけではないのです。アマゾンや楽天などによってインターネットを通して全国で同じように値段設定がされている莫大な数の商品がある中で、またネットによってなくなってしまった仕事さえある中で、美容業界は特殊であると言えます。