日本は戦後76年を経過して経済的には非常に豊かな国になりました。しかし、同時にあらゆる社会問題も生み出し続けています。年間自殺者数は約3万人、遺書のない変死数が約15万人、うつ病患者数が100万人以上、親がいるのに事情により児童養護施設で保護を受ける子供が約3万人。国の借金は1,000兆円以上。超高齢社会の到来による医療費、介護費、年金の増大。貧困層の増加に伴う子供たちの栄養失調。失われていく自然や文化。これが私たちの親やご先祖さまたちが望んでいた日本の姿なのでしょうか。おそらく私たちの世代よりも、私たちの子供たちの世代が深刻な社会問題を正面から受け止めなければいけなくなります。いまの私たちにできることは、「もうこれ以上社会問題を先延ばしにしない」こと、そして「企業が率先して、社会課題の解決に取り組む」ということです。資本主義社会において、企業は経済発展を推進しながら、社会問題を生み出し続けました。これからは社会課題を解決することを事業の軸とする時代になってきます。そして、私は上場企業や大企業よりも中小企業こそが、社会の課題を解決する力を持っていると思っています。今こそ未来の子供たちのために、未来を託せる企業を創りましょう!
子供たちに託せる企業を創る
1. もうこれ以上、社会問題を次世代に繰り越さない
2. 自分の子供が働きたいと思える企業を創る
60歳以上の中小企業経営者の約60%が、「後継者がいない」そうです。この数字が何を意味しているのか?10年後か20年後には、その60%の中小企業はなくなるということです。「事業承継」という言葉を株の移転や、相続の問題だと思っていらっしゃる経営者が多くおりますが、それは全体の中の一部でしかありません。本当に大切なことは、その企業が目指す「目的地」へ向かう意志を引継ぐことです。
「こんな会社、誰も引き継ぎ手になりたいと思わないよ。」、「誰か良い人がいれば譲ってもいいんだけどね」このような発言をされる経営者の方もおりますが、経営者本人がそう思っているようでは事業承継がうまくいくはずがありません。「この会社の想いをしっかりと次世代まで引き継がせたい!」「次世代のリーダーを育てるんだ!」と経営者が積極的に事業に取り組むからこそ、それに応えようと思う人が出てくるのです。子供が親の背中を見て育つのと同じで、経営者の背中を見て後継者は育ちます。それは血縁があろうが、なかろうが同じです。
自分の子供や、社員の子供たちが、将来自分の会社で働きたいと思えるような企業を目指して経営を続ければ、必ず子供や社員の方から「この会社を継がせてください」と言ってきます。これこそが、日本が2600年以上承継を続ける日本の知恵であり、日本型の経営スタイルの本質です。
3. 子どもたちの未来こそ日本の未来
なぜ、日本は世界でも最も創業100年以上の企業が多く存在するのか。それは経営の本質である「継続すること」の重要さを理解し、次の世代につなげるということを大切にしてきた国だからにほかなりません。
伊勢神宮には20年ごとに新しい社殿を造り替える「式年遷宮」という儀式が創建以来1300年以上にわたり行われ続けています。建造物も含めてあらゆるものは時の経過とともに劣化していきます。人の体が新陳代謝によって細胞が生まれ変わるように、社殿も20年に一度作り替えることで創建当時の建築技術や想いを常に新しく保たれています。式年遷宮の最も大きな効果は、20年ごとに行われる大規模な建設工事によって宮大工を含めた職人たちの雇用を創出し、次世代を担う若者たちが現場で学ぶ機会を定期的に与えられることにあります。いくら当時の設計図や建築技術があっても作り手である職人がいなければ再現することはできません。日本の優れた建築技術であれば木造建造物でも100年、200年耐えられる建造物を創ることは十分に可能です(日本最古の木造建造物である法隆寺は1415年前に建造されています)にも関わらず、20年ごとに新しいものを創るのは、「モノ」ではなく「ヒト」を次世代に残すことの方が難しいということを先人は理解していたからです。
中小企業も全く同じです。企業を存続させて次の世代へつなげるのは、資産でもビジネスモデルでもなく「そこに働く人たち」であり、次世代を担う若者たちである今の子どもたちです。子どもたちの未来を輝かせるのは、今を生きる私たち大人たちの責務であり、私たちの「在り方」が子どもたちの未来を左右します。だからこそ子どもたちのために必要とされる企業を1社でも多く増やし、残すことが私たちエンパワーの使命なのです。